病気の症状と治療

当院での対象疾患となる病気についてご説明します。

うつ病

産後うつ病

適応障害

パニック障害

社交不安障害

全般性不安障害

自律神経失調症

不眠症

 

うつ病

人生には時に辛く悲しい出来事があります。大切な人やペットとの別れ、進学や就職での挫折、失職、病気など。数日泣いたり、寝込んだりしたとしても、たいがいは何とかやり過ごしていけるもの。しかし、うつ病になると「心の風邪」なんてものではありません。

自分が自分でなくなった様に感じたり、何をやっても心は晴れず、苦しい日々が延々と続くように思われたり…。今までできていた学業、仕事、家事、育児が手につかず、さまざまな心身の不調が現れます。

 

身体症状として、全身倦怠感、易疲労感、無気力、頭痛、頭重感、めまい、吐き気、のどのつまり感、動悸、食欲低下または過食、胃痛、腹痛、便秘や下痢、不眠または過眠など。

精神症状として、不安、あせり、イライラ、気分の落ち込み、涙もろい状態、死にたくなるなど。

 

当院での治療

1.精神療法
当院では精神療法を用い、患者様のお話を充分うかがう中で、回復のためのお手伝いをいたします。薬物療法は根本的な治療ではなく、あくまでも一時的に症状を軽くするためのものととらえています。

2.薬物療法
精神療法のみの場合もありますが、必要に応じ、薬を処方します。副作用が少なく、減量時に問題の起きにくいものを、必要最低限の種類・量で使います。

漢方薬

抗不安薬 ※注(リーゼ、レキソタン、ソラナックス、デパス、ワイパックス、メイラックス)
睡眠薬 ※注(ベルソムラ、ロゼレム、マイスリー、アモバン、レンドルミン、サイレース)
抗うつ薬(デプロメール、ジェイゾロフト、リフレックス、アモキサン)

抗精神病薬はドグマチールのみ使用
その他の抗精神病薬、気分安定薬は使用しません。

 

15歳(中3)までの患者様には、漢方薬・抗不安薬(セルシン)・睡眠薬(ベルソムラ、ロゼレム)のみ使用。上記以外は(極力)用いません。

10代後半の患者様への抗うつ薬は、どうしても必要な時のみ、慎重投与します。

成人の患者様でも、抗うつ薬を使用される方は半数以下です。症状の改善と共に、徐々に減量、中止します。

 

うつ病は、何よりも早めの受診が大事です。「ひょっとして うつかも?」と思ったら気軽にご来院下さい。

あなたのうつ病は、双極性障害(そううつ病)Ⅱ型かも…。

 

他院から転院されたうつ病患者様の中には、充分にお話をうかがうと、軽いそう状態が見られるケースが少なくありません。誤診であれば、治療に反応が見られず、長引くことは当然でしょう。10~20代の若年発症の方や、うつ病の再発を繰り返している方も、もしかしたら、そううつ病かもしれません。

 

 

産後うつ病

産後うつ病とマタニティーブルーには大きな違いがあります。

 

・マタニティーブルー

産後早期に起こる一過性の気分と体調の変調です。産後1ヶ月以内、特に産後2~3日までの母乳の出ない辛い時期、1~2週間目の不安がピークに達する時期、里帰りから自宅に戻った時期に起こりやすくなります。褥婦の30~50%に見られ、マタニティーブルーになるかどうかは、本人の性格、周囲のサポート状況、生活環境などの影響を受けやすいです。

主な症状として、全身倦怠感、易疲労感、頭痛、食欲低下、不眠、情緒不安定などがあげられます。

対応としては、何より心身の休息が大事です。周囲の人は家事・育児を大いに手伝い、良き話し相手となり、褥婦の負担・不安を減らしてあげられるよう努めると良いでしょう。特に治療の必要はなく、数日で自然に回復します。しかし、うつ病へと移行するケースもあり、その時は受診が必要です。

 

・産後うつ病

褥婦の10%に見られます。過去うつ病歴のある人は25%、前回産後うつ病歴のある人は50%でなりやすい病気です。
産後1~2週から1年以内に発症しやすく、妊娠中から発症している場合もあります。

一般のうつ病の症状以外に、自分は母親としての役割が果たせていないと悩む、育児ができない、子どもをかわいいと思えない、将来を悲観する、なども見られます。子どもにも影響を及ぼすので早めの受診が大事です。放置すると慢性化・重症化したり、虐待、母子心中などの危険もあります。

 

当院での治療

うつ病と同様ですが、元小児科医の経験を活かし、育児に関する相談にも応じます。
また、薬が必要な時は、出来るだけ母乳への影響の少ない薬を使いますので、母乳育児の継続は可能です。安心してご相談ください。

 

適応障害

進学、就職、部署異動、転居、結婚などの環境の変化に適応できず、ストレスからうつ病に似た症状が出現します。

うつ病と違い、過食や過眠になりやすい、ストレス源となる人物や環境から離れると、比較的早く症状が軽減し、趣味や旅行を楽しめるなどの特徴があります。辛い状況に身を置き続けると、うつ病に移行することもあります。

 

当院での治療

1.精神療法
ストレス軽減のため学校や職場の環境調整を図ったり、ストレス耐性を高めるためのアドバイスも行ったりします。

2.薬物療法
抗不安薬 ※注、漢方薬を用います。症状に応じて抗うつ薬を併用することもあります。

 

パニック障害

100名中2~3名に見られます。
『パニック発作』、『予期不安』、『広場恐怖』の3つの症状が揃います。

 

『パニック発作』

何の前触れもなく突然、めまい、息苦しさ、吐き気、動悸、冷や汗、手足のしびれや震えが起き、「このまま死ぬのではないか」という恐怖感に襲われることもあります。数分から30分以内に発作は治まり、病院で検査を受けても異常は見られません。肺や心臓など身体の病気ではないので、死に至ることはありません。

 

『予期不安』

「また発作が起きるのではないか」という不安が、頭から離れなくなります。

 

『広場恐怖』

広場とは、広い場所ではなく、人の集まるところを指します。
発作が起きたら逃げ場のない空間、例えば、人混み、公共の乗り物、高速道路、長い行列、美容院などが恐怖となり、避けるようになります。
多くの場合、過労、寝不足、体調不良、夏の高温多湿、精神的なストレスが関係しています。

 

当院での治療

1.精神療法
認知療法(思い込みの修正)、行動療法(出来ない事に対して徐々に挑戦する)、発作の時の対処法についてのアドバイスも行います。

2.薬物療法
当院では、抗うつ薬は使用しません。抗不安薬 ※注、漢方薬を用います。

 

 

社交不安障害

100名中2名に見られます。
人前で何かをしようとする時に不安に襲われ、極度の緊張状態に陥ります。
スピーチ恐怖、会食恐怖、書痙(人前で手が震え字が書けない)、電話恐怖などがあります。赤面、発汗、声や手足の震え、動悸、腹痛、便秘や下痢などの症状が出ます。

 

当院での治療

1.精神療法
認知療法(思い込みの修正)、行動療法(出来ない事に対して徐々に挑戦する)、発作の時の対処法についてのアドバイスも行います。

2.薬物療法
抗不安薬 ※注、漢方薬を用います。

 

全般性不安障害

100名中3~5名に見られます。
ふいに理由もなく不安にかられ、次から次へと不安が重なり、気持ちの安らぐ時がなくなります。心配事の内容は、健康や経済問題など、理解可能なもので、妄想的ではありません。頭痛、首肩こり、不眠、不安、イライラなどの症状が出ます。

 

当院での治療

1.精神療法
認知療法(思い込みの修正)、行動療法(出来ない事に対して徐々に挑戦する)、発作の時の対処法についてのアドバイスも行います。

2.薬物療法
抗不安薬 ※注、漢方薬を用います。

 

自律神経失調症

自律神経は体温、心拍数、血圧、発汗などの生理機能をコントロールする働きを持ちます。交感神経と副交感神経から成り立っています。
主な原因として、睡眠不足による生活リズムの乱れ、過労、精神的ストレスなどがあげられます。自律神経のバランスの崩れにより起こります。
身体症状は、全身倦怠感、易疲労感、微熱、頭痛、めまい、首肩こり、息苦しさ、動悸、腹痛などが見られます。
精神症状は、不安、イライラ、情緒不安定などが見られます。
内科などで検査を受けても、異常はありません。うつ病やパニック障害の様な心の病気ではなく、身体の病気とされています。

 

当院での治療

1.精神療法
無理をしない、規則正しい生活(早寝早起き、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動)を送ることが大事です。

2.薬物療法
抗不安薬 ※注、漢方薬を用います。

 

不眠症

4~5名に1名の割合で見られます。
必要な睡眠時間は人によりさまざまです。日中しっかり覚醒して過ごせていれば、問題はありません。7~8時間睡眠をとる人が多いですが、65歳以上の人は6時間で十分とされています。

不眠には以下の4タイプがあります。

  • 寝つきが悪い(入眠障害)
  • 夜中に目が覚める(中途覚醒)
  • 早朝に目覚め、二度寝できない(早朝覚醒)
  • 睡眠が浅い(熟睡障害)

 

症状としては、全身倦怠感、易疲労感、朝起きられない、日中の眠気、頭痛、集中力低下、食欲低下または過食、不安、イライラなどが見られます。
むずむず脚症候群、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方には、睡眠専門クリニックを紹介します。

 

当院での治療

1.精神療法
薬物療法より先に、良い睡眠をとるための生活上の工夫について、アドバイスを行います。

2.薬物療法
睡眠薬 ※注、抗不安薬 ※注、漢方薬を用います。

 

夜更かし朝寝坊の改善には、早寝ではなく、毎日早起きをして午前中太陽の光を浴びること、散歩をすることが効果的です。

 


※注 ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬について

少量でも長期投与により、依存がおきて薬をやめられなくなる可能性があります。当院では症状の改善に伴い、減量中止または頓服を目指しております。

 

初回はもちろん、その後も、ゆっくりと時間をかけてお話をうかがう事こそ、診断や治療に最も必要です。

治療を終了(当院では卒業と呼ぶ)された患者様は、『病を通じての“気づき”や”学び”を得ること』で、より良い人生を歩んでおられます。
病気になった原因ではなく意味を知り、生き方上手になられた患者様の多くに、再発は見られていません。人生のある時期、1人では前に進めなくなった患者様の、併走者となるのが、私たち医療者の役目です。

 

開業して9年目。これまで約7000人の方が来院して下さいました。通院された患者様の内、幸いにも自死された方は0人、うつ病を再発された方は1人、3年以上通院されている方は30人ほどです。

長年勤務医として勤めた小児科から心療内科に転身し開業しました。まだまだ発展途上の私が、これまで診療を続けてこられたのは、患者様やスタッフや連携してくださる医療機関の支えがあったお陰です。今後も常に、人として対等な立場で、1人ひとりの患者様と真摯に向き合い、共に成長していけたらと願っております。
どうぞよろしくお願いいたします。